ペアリングを外して

 俺は了承して、湯本とアポを取った。

「お前と浮気していると疑われている」

 と言ったら爆笑された。

 まったく、人の気も知らないで。

 それでも快諾してくれた湯本に感謝だ。

 翌日、仕事上がり。

 渋谷に三人で待ち合わせ。

 職場が渋谷に近い俺は一番に到着した。

 ハチ公前の電車の模型に寄りかかっていると、湯本の方が先に到着した。

「おっすー」

 いつものようにヘラヘラ笑う湯本。

 俺の隣に寄りかかる。

「悪いな、付き合わせて」

「いいよー。あたしが疑われるなんて、マジ心外だけど」

「誕生日のメールが原因」

「あ、それなんだ? なんかごめんね」

「謝る必要はないけどさ」

 俺のせいで湯本まで巻き込んで……。

 でも三村本人が疑われなくて良かった。

 疑われないよう、最善を尽くしていて正解だった。



 そう思えたのは、この時だけだった。


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