ペアリングを外して

 まさか、気付かれていたとは思わなかった。

 石鹸の匂いなんて自分ではわからなかったし、シャワーを浴びた後に汗をかいたわけだし……。

 浅はかだった。

 三村のほうはどうだったのだろう。

 これほどまでに確信している湯本。

 一番危険な人物を疑われてしまったものだ。

 こんなことなら、本人である三村を疑われた方がよかった。

 賢い彼女なら、ボロを出すこともなくやり過ごしたことだろう。

 何も言わないでおいてあげる、と言った湯本に一安心しつつ、いつかはバラされるかもしれないとヒヤヒヤした。

 数分後、久美がやってきた。

 久美は湯本を見るなり、思いっきり頭を下げた。

「私なんかのために呼び出してしまってすみません!」

 湯本は何も知らないかのようにヘラヘラ笑って、

「気にしないで。本当にただの中学の同級生だから、大丈夫よ」

 その言葉に久美の笑顔が戻った。

 その辺の居酒屋に入って、三人で食事をする。

 俺のオゴリだというのに遠慮のない女二人は、出資者である俺を差し置いて盛り上がっていた。

「で、その化粧水が超良くってー」

「いいなぁ。使ってみようかな」

< 66 / 109 >

この作品をシェア

pagetop