ペアリングを外して
#6
久美と約束していた金曜日、俺は朝からモヤモヤして仕事も手につかない状態に陥っていた。
その理由は、昨日の夜にさかのぼる。
風呂から上がり、ビール片手にテレビのリモコンを握ったとき、テーブルに置いていた携帯が震えだした。
三村からだった。
何気なく電話に出る。
「もしもーし」
しかし耳に入ってきたのは、いつもの姉御の声ではなかった。
「……っ、小出……? グスッ」
泣いている、というのはすぐにわかった。
「おい、どうした?」
活力に溢れている三村の泣き顔なんて想像できない俺は、さすがに焦った。
「ごめん……」
「謝んなよ。何かあったのか?」
苦しそうにしている三村。
何が悲しいのだろう。
何が辛いのだろう。
三村が涙を流すなんて、よっぽどのことだ。