ペアリングを外して
敷かれたはずのレールを、この手で壊した瞬間。
二年半積み上げてきた久美との関係を、断ち切った。
「はあぁー……」
体の芯から吐き出されたため息には色んな感情が込められている。
安堵、謝罪、苦悩、そして後悔。
久美にとっては最低な男。
そんな俺でも、三村にとっては最高の男になりたい。
俺は立ち上がり、人の流れに乗った。
これでいい。
たとえ三村が俺を選んでくれなかったとしても、俺は久美と別れるべきだった。
俺を愛してくれていた久美が、どうか幸せになりますように。
帰りの電車の車窓から、かの探偵事務所の看板が見えた。
相変わらず大きく「浮気調査」と書かれている。
「必要なくなったよ」
誰にも聞こえないくらい小さく、ポツリと呟いた。