ペアリングを外して
#7
俺の部屋に残された久美の形跡。
玄関には久美用の健康サンダル。
寝室には久美用の枕。
トイレには久美用の生理用品。
洗面台には久美用の化粧水やメイク落し。
キッチンには久美用のグラスとカップ。
思えば風呂場のシャンプーやボディソープも久美が選んだものを使っているし、食器用洗剤や洗濯洗剤、柔軟剤も久美のチョイスだった。
洗剤などの消耗品はいいとして、彼女のために準備したものは全て破棄する。
結果、部屋は心なしか殺風景になった。
女がいないことを「華がない」なんて表現するが、その通りだと思った。
寂しい気持ちは否めないが、残しておくわけにもいかない。
思い切ってゴミ袋に詰めていく。
久美へありがとうとさようならの気持ちを込めて。
失われた色を三村が彩ってくれることを願った。