ペアリングを外して
ディスプレイには湯本の名前。
三村からの連絡を期待した俺は、例によって舌打ちが出た。
同時にホームに電車が到着する。
見送ることにして列を抜け、通話ボタンを押した。
「もしもし」
「あ、小出君? 来年になってからのことなんだけど、みんなでまた集まろうって話になったの」
「あー、いいんじゃない?」
「なんでそう元気ないのよ。もっとテンション上げてくれない?」
不満そうな声を出す湯本。
三村とのことを察知しているこいつに、テンションなんて上がるわけがない。
「取引先の上司と飲んで疲れてんだよ」
「あっそ。で、日程なんだけどー……」
俺の言い訳なんてスルーしながら、湯本は会の詳細を語り始めた。
書き止めることもできない俺は、
「悪いけど、日時だけメール入れといて」
何気なくこう言った。
鋭い湯本はこの言葉に反応する。