ペアリングを外して
三村が、俺を選んでくれた。
中学時代の思いが報われた。
喜ばずにはいられない。
笑わずにはいられない。
渋滞のため車はスムーズに進まなかったが、何とか会社を出てから一時間半ほどで三村の待つビルへと到着することができた。
ビルの前で左車線の路肩に車を止め、電話をかける。
ワンコールも鳴らないうちに三村の声が聞こえた。
「着いたよ」
「うん、黒のオデッセイでしょ? 今向かってる」
車を降りて、彼女の姿を探した。
「小出!」
待ち焦がれた姿はヒールをカツカツ言わせながらこちらに向かって走っている。
手にはいつものバッグと小さ目のボストンバッグを抱えていた。
そんなに急がなくたって、俺はどこにも行かないのに。
息を切らしながらも満面の笑みを見せる三村を俺は思いっきり抱きしめた。
「ちょっと、人が見てるよ」
「いいよ、見られたって」
「もう。今は我慢して」
そう言って俺から離れ、軽く小突かれる。
はにかむ三村を乗せ、俺は再び車を走らせた。