ペアリングを外して

 世間はクリスマスイブ。

 東京の街は人であふれかえっていた。

 車で来てよかった。

 二人きりの空間。

「来るなら事前に連絡くれればよかったのに。引越し屋なんて使わなくたって、荷物は車で運べるし」

 俺の問いに、三村は自嘲気味に答えた。

「そういうわけにもいかなくて。あたし、彼に黙って出てきちゃったし」

「え?」

 黙ってって、「A」と話はついていないということか。

「最近彼が帰ってくるの、毎日日付越えてからなの。年末だし、忙しいのかな。話がしたいって言っても、いつも明日ねって言って聞いてくれなくて。だからもう、勝手に出てきちゃった」

「……そうか。ビックリするだろうな」

 同情するよ、「A」。

 でも自業自得だ。

 もしお前が三村の話を聞いていれば、こんな事態にはならなかったかもしれないのに。

 
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