ペアリングを外して

 ピザ屋のチラシを手放さない彼女を後ろから抱きしめるような体勢で座った。

 ああ、幸せ。

 しっとりした髪からいい匂いがして、首元からは別のいい香りがする。

「小出、もう、くすぐったいよ」

 今すぐにでも彼女を手に入れた実感が欲しい俺。

 食欲よりも、アッチの欲のほうが大幅に勝っていた。

「あっ、こら」

 俺の行動を力なく咎める三村は、それでも食欲のほうが勝っているのか、ピザ屋のチラシを手放さない。

「やっぱり、エロいことばっか考えてる」

 愛らしく悪態を漏らす口を塞げば、チラシを持つ手から力が抜ける。

 それを見逃さずにチラシを奪い、手の届かない所にポイっと放った。

「お前が考えさせてんだよ」

「バカ、人のせいにしないでよね」

 焦る必要なんてないのに、今すぐに実感したかった。

 この幸せが、本物であると確認したかった。

 クリスマスイブ。

 なんておあつらえ向きの日にちなんだろう。

 まさか神からの贈り物……?

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