【短編】『D』


案内されたのは、一番奥の個室の部屋。その窓からは遠くに夜景が見える。




『夜景綺麗だね。もしかして、このお店すごく高いのでは・・?』
私でも、分かる。たぶんかなり高いはず。



『そんなことないよ。でも美味しいのは確かだよ。』
夜景とその微笑みはヤバイよ////。



コースがでてきた、前菜からメインデッシュにパスタに最後はデザート。
私は「美味しい」を連発してた。彼はその度に「ほんと、美味しいね」て頷いてた。


私はコースに合うワインを彼は車なのでノンアルコールビールを飲んでた。
ワインを飲んだせいか、この雰囲気に呑まれたのかわからないけど、
結構話せたほうだと思う。今の職業や、年齢や、趣味や、あの大金のことも。


彼は今大学生で、21歳、趣味はドライブ。
あの大金は、三ヶ月前祖母がなくなったとき、遺産で貰ったこと、
そして自分で運用することと遺言に書かれたこと。
自分に合った投資商品が見つかって、それがうちの会社だったこと。




そして一番気になってることも質問してみた。


『なんで私を誘ったの?』
私にしてはかなりストレートな質問。





『なんでだろうね?』

彼はちょっと頬を赤らめながら答えた。


頬が赤くなったのはノンアルコールビールでないことは彼の仕草でわかった。


鼻の上を右手の親指と人差し指でちょっと摘みハミカミながら
上目使いでこっちをみる。その仕草がなぜか懐かしいと思ってしまう。



デザートを食べきったとこで、化粧室に向かった。
鏡で自分の顔を確認する。

ちょっと飲みすぎたかな?最初は彼の前では絶対食べれないって思ったけど、

彼の自然な接し方や雰囲気に、気を抜いたかもしれない。でも全然いやな感じはなく、

逆に好意を持った。個室に戻ったときには彼は帰り支度をしてた。そしてお店をでた。



えっ、ちょっと待って、支払いは?
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