【短編】『D』
とにかくどうにか、私の赤い顔を平常に戻すのに必死だった。
なんとか落ち着き、ワインを口に運ぶ。
!!美味しい。なに??このワイン?
『美味しいでしょ?そのワイン』
玄明は、どう?って聞いてるみたいに首を傾けて聞いてきた。
『うん。すごい美味しい、飲みやすいし』
『でしょ?そのワイン、ここにキープしてるんだー。』
へー、本当に美味しいわ。
『げっ、玄明はワイン飲まないの?』
まだ恥ずかしいよ、呼び捨ては。でも折角、こんなに美味しいんだし、
もうタクシーで帰るし、一緒にワイン飲みたいしね。
『うーーん、俺、ワイン好きなんだけど飲むとちょっと変わるみたいだから・・・』
ちょっと考えながら俯いた。
『どんな風に変わるの?』
完璧すぎるから、ちょっと興味がある。
『いや、・・・ただ思ったことすぐ言ってしまうみたい。』
なんだ、そんなこと?いいんじゃないの?思ったこと言って。
ストレス発散にもなるんじゃない。
それと何を考えてるかいまいち分からないから、飲ませて聞いてみようか。
って飲ませてって一般的に男性が女性にするもんじゃない?!
段々大胆になってきてる。
まぁー、あれこれ考えてても、玄明の考えてることわかんないし、飲ませてみよう。
『それじゃー、ちょっとくらいはいいよね?』
なんだか完全に私が落としてやるみたいじゃない?!
『うん。まぁー、ちょっとぐらいならね。』
彼は、まっいいか。ぐらいののりで店員を呼んだ。
争うように、女性店員が三方向から同時に飛んでくる。
ちょっと笑えた。
彼はもう一つコップを持ってくるように頼み、
グラスに注ぎ、改めて乾杯をした。