【短編】『D』


部屋に戻った私の手を玄明は離さなかった。



どのくらいの時間が過ぎたのだろう。


彼は泣き止むと「ごめんね。俺、寝るからシャワー浴びるね」

と言ってバスルームに入っていった。



現在に至る私は、そわそわしてた。


はーーー、本当どうしよう??仮にも今日会ったばかりだよ。



それが一緒にホテルにいるなんて・・・・。どうしちゃったの?!!私?





でもあの泣き顔は駄目。

無理。

たぶんどんな状態でも彼を置いて帰るなんて無理。



とりあえず、静かな室内を紛らわすためにテレビをつけ、窓際のソファーに座った。


たぶん5分ぐらいで彼は浴室から出てきたと思うけど、私にはほんの30秒ぐらいに感じた。



彼はバスローブを着て、バスタオルで髪を拭きながら
『ふー、サッパリした。七海さんも入ったら?』





『えっ?!・・・・いや、私はいいよ・・・・』
ここで素直に入ったら、なんだかヤル気みたいな感じがする。




でも、彼もそんな雰囲気を察したのか




『いや、無理にとは言わないけど、本当になんにもしないから入ったほうがいいよ。
浴室もかなり豪華なんだよここ。』




うーーん、嘘をつくタイプには見えないし、本当になんにもしなそうだし、豪華な浴室も見てみたい。




『うん、しゃー、お言葉に甘えて。』
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