【短編】『D』



取りあえず、通帳を預り、残高を確認してみる。
・・・・・・・・・・えっ、何?!この額は?!ここから半分投資するの?
私はもう一度、頭を縦に小刻みに動かしながら目で数えて確認してみる。
どう数えても、丸が8個ある。その丸の先には3の文字が・・・・・・
さっ、三億?!!!なんでこの青年がこんなに持ってんの?

『おっ、お客様、ここから半分ですと1億5千万の投資になりますけどよろしいのですか?』
大丈夫?この人?本物この通帳?こんな額、契約したことないよ・・・。


『いいですよ。それと俺、名前 山口玄明(ヤマグチ ゲンメイ)っていいます。
「ゲン」か「ゲンメイ」って呼んでね。』
今度は逆バージョン、最初はちょっと真剣顔、最後は微笑み。名前は山口玄明って言うんだ、いきなり呼び捨てはできないよね・・・・・・ってそうじゃなくて、いいの?
1億5千万だよ?

『山口様、本当にいいんですか?』

とりあえず、苗字で呼ばないとね。

『だから、「ゲン」か「ゲンメイ」って呼んでって!』

いやいや、違う違う。そこじゃなくて、今は1億5千万だって!!


ってやってたら、来たよ・・・・・、やな奴が・・こういうことはすぐ嗅ぎつける
あんたは大口の亡者か!!



嫌だけど上司だし、とにかくこのお客様が1億5千万投資しようとしてることを話し、
通帳を見せる。すると表情が変わった、小口投資には見せないような笑顔、
虫唾がはしるわ。

『山口様、ここからは私が担当させていただきます。主任の安藤と申します。
山口様の貴重な財産を全身全霊をかけて管理いたしたいとおもいます。』


本当に嫌!キモイ笑顔見せんじゃねーよ!!マジでムカつく!!
あーあ、また取られちゃうね、そうだよね自分の大事な財産を
こんな入社して2年もたってない社員に任せたくなよね、しかも女だし。

半分諦めかけたその時


『はぁー?何言ってんの?俺は桑原さんの勧める商品に投資するんだよ!
あんた関係ないでしょ?』

あんな不機嫌な顔するんだ・・・、でもそれもカッコいい///。
って、えっ、私でいいの?まだ証券業界ではぺーぺーだよ?いいの?



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