【短編】『D』
「私の初恋は、小6の時、夏休み親戚の家に3週間ぐらい遊びに行ったとき。
あまり泳ぎがうまくなかったけど、海に子供たちだけで行ったの、そしたらちょっとした波にのまれて溺れかかったのを助けてくれた少年に恋をしたの。
それからはずーっと彼と遊んだ、夜花火したり、釣りを教えてもらったりとか、将来なんになりたいって話し合ったり、でも彼の顔とかはあんまり覚えてないの
でも笑顔が綺麗だったことを覚えてる。」
カクテルで喉を潤し、また話し出す
「そして、私が帰る前の日に浜辺で石を見つけたの、二つ合わすとハートになる石。
片方づつ持っておこうって、そして約束したの、大人になったら結婚しようねって」
私は、財布から石を取り出す。
500円玉ぐらいの大きさだからあの日からずーっと財布に入れてる。
『いまでも持ってるなんて引かないでよ、ただ捨てられないだけだから。この石』
私は、彼に石を見せた。
『やっぱり・・・・そうだっ・・・たんだ』
彼は目を大きく開きそう言うと、目から涙が零れ落ちた。
『ちょっ・・・ど、どうしたの?』
えっ???どうしちゃったの?そんな泣くような話じゃないけど。
それから彼は俯き何も話さない。
私はそんな彼をただ呆然と見ることしかできなかった。