【短編】『D』
しかし、大口亡者安藤は引き下がらない。
『いえ、山口様、桑原はまだ入社して日も浅いですし、
私であれば安心してお任せ願えればと。』
安藤ーーめ、日が浅いのは自分でも自覚してるっちゅーに!!!
ほんとに、ム・カ・つ・く !!
『だから、あんたが担当なら俺、投資しないよ!!てか退いてくれる?』
キャーーーー////!!やっちゃってください。
この際ボコボコにやっちゃってくださーーーーい!!
『いや、しかし・・・・・・・』
あーんーどうーーーー!一回死んで!
なんて窓口でやってるもんだから、とうとう支店長がやってきた。
池田支店長はやさしくて、気配り上手で、仕事も出来る、しかも超愛妻家。
『どうしたんだい?お客様の前で』
『支店長・・・・あの・・・』
ちょっと焦る大口安藤。
ここで私がいままでの経緯を説明した。すると・・・・
『山口様、この度は我が社の投資商品にご興味いただき、有難うございます。
投資額は1億5千万円でよろしいですか?』
やんわり、しかも上品に、しかも的確に。さすが支店長。
『はい。しかし、担当は桑原さんにして下さい。
桑原さんの勧める商品に魅力を感じたんですから。』
・・嬉しい。いままで仕事してきて良かったって今しみじみ思ってます。
『畏まりました。それでは桑原さん!手続きをお願いします。』
『はい!』
支店長命令だからね、チラッと安藤を見てみると、ふて腐れてる。
その態度を支店長にみられて、注意されてる。フッ、いい気味だ。
『あの安藤って奴なんかムカつくね、なにあのキモイ笑い方。』
『そうだねー・・・・・っ・いえっ・・そ、そんなことは・・・・』
焦った、つい本音がでちゃった。
『はは、いいよ、本音トークで。』
顔が赤くなりながらも、契約を進めた。
こんな大口はじめてだから緊張するけど、書き込む金額が違うだけで
スムーズにできた。
『お待たせしました。こちらが控えになります。』
契約書の控えと通帳を返した。