【短編】『D』
『会社終わるの早かったですね。じゃー、行きますか。』
そんなに笑顔で話しかけないで。おもわず目を逸らしちゃうじゃない。
周りの女からはかなり睨まれてる。
『・・・・・・・あのー・・早く車に乗りましょう・・・』
焦りながらも、車がある方へ歩き出す。
『そうだね。お腹減ったしね。』
あっ、私ご飯早く食べたいみたいに思ってない?
逆よ、逆!緊張して絶対食べれないって。なんて挽回しよう・・・・・
「お腹へってないよ」て言おうか、「周りが見てるから恥ずかしい」て言えばいいのかな?とか考えてたけど結局言えない。
車に乗り込むと、さらに高級感が漂ってる。ぼーっと車内を観察してると
『イタリアンでいいよね?』
はっと、我に返り
『・・・・うん。』
店まで30分ぐらいだからって言ってゆっくり車を動ごかす。
車をバックで動かしてる・・・・その姿はやっぱりカッコいい。
いいのこんなイケメンと食事して。なんてまた見惚れてる。
車内ではあまり話もせずに風景だけが進む。
そりゃそうよね、私「うん」とか「ううん、大丈夫」しか言ってないもの。
会話ぶった切りだよね。窓の外しか見てないし。
どう話したら会話がはずむのかな?なんて考えてるとお店に到着した。
その店は、小さな丘の上に建ってて、洋館風なんだけど窓が大きくかなりお洒落。
『こんな所に、こういうお洒落なお店があったんだー。』
『でしょ。おれの取って置きの店。さぁ、入ろ。』
彼はハミカミながらお店に入っていった。
私はちょっと後ろをこそこそと付いて行く。
お店の扉をあけると、静かにジャズが流れ、正装のボーイが案内してくれた。
『お待ちしておりました、山口様ご案内させて頂きます』