擬態
とある日。
 
同属の一人が、店主が懇意にしている商品開発部と製作部の者に声をかけた。

それはあるモノの製作依頼。

彼等は報酬を受け取り、望みのモノを作った。

それは―人形だった。

人の形を模したそれは、白く柔らかい。

人形の頭の部分に髪の毛を、体の中心部に自分の血を埋め込むと、その人形は髪の毛の主になる。

体を動かす力は、入れていく血の量による。

そして人形を生かす力は、血の主の寿命によるという。

ただし、その人形は生きている人間にはならない。

必ず死んだ人にしか、ならない。

死んだ者を、生きている人間の寿命と血を引き換えにこの世によみがえらせる人形―それがウワサの正体だった。
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