六花伝
違う形で出会えていたら、もっと幸福になれたのかもしれなかった。
泣きだしてしまったらもう止まらなかった、止められなかった。
「みつ。」
伸彦は美都に浅く口づけた。
優しかった。
「どうやって、来たの…。」
「手引きしてくれた人がいました。」
「だって、見つかってしまったら。」
伸彦は目を伏せた。
「美都、逃げよう。」
「伸彦…。」
「ここから、連れ出してやる。」
迷った。
共に、ここから逃げてしまいたかった。
逃げて、二人で安らかに同じ時を歩んでいけたら…。
それは、どんなに幸福なことだろう。
そばにいてほしい。
これからも、あたしといてほしい…。
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