六花伝
気が付いたら、暖かい腕で抱きしめられていた。
村の長の家に拾われたと知ったのはずっと後だったけど、ただ温もりがうれしかった。
長は、あたしを娘同然に育ててくれた。
すっかり人間不信になっていたあたしは、拾ってくれた使用人から離れられなかったけど、そんな光景にも苦笑しながら見守っていてくれた。
最近では、あたしの子供を早く見てみたいと言ってくれるけど、あたしには当分無理そう。
もう十五になるけれど、どこの家もあたしをもらいたがらないようだから。