六花伝
 「暑いな…。」友達とキャッチボールを河原でしながら、和也はぼそっとつぶやいた。
「真夏日だろ、今日は。」悪友の洋(よう)がだるそうに言った。
「そもそも、なんでこんな日にキャッチボールなんだよ。ばっかじゃないの、俺ら。」
「物置から、久々にボールが出て来たから懐かしくなったんだよ!嫌ならそこの川で河童みたいに泳げよ。」
「それもそうだな。一理ある。」
洋の暑苦しい顔を眺めているよりずっとましに違いない。
「え?うそ、本気でやる気か?」
「ああ。」
スニーカーと靴下を脱ぎ棄てると、服を着たままばしゃばしゃと川に入った。
「ぬる!」
浅い所は思ったよりも日差しで温まっていた。
「おい、どこまで行くんだよ。」
背後の声は完璧無視して冷たい部分を探して深みへと歩く。
(これで流されたら面白いだろうなあ…)
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