六花伝
いくら、自分が拾って来たからといったって、もう十五才の彼女が使用人の自分たちに毎回差し入れを持ってくるのは、純粋に優しさからくる行動だろう。
自分を追いかけて回っていたあの頃とはもう違う。
…それは、少し寂しい。
(いい嫁にはなりそうだが…。)
まだもう少しだけ、自分の近くにいてほしいと、八つも離れた彼女を愛しく思っていることに自嘲し、伸彦は一滴残らず冷水を飲み干した。
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