六花伝
「また行ってきたの?あなた。」
「沙希お姉様。」
「こんな暑い中よく行くものね。私にはとても真似できないわ。」
「お姉様は、休んでいて下さい。体に障ります。」
沙希は、それを聞くと微笑んだ。
「優しい子ね。
美都、私はね、あなたがうらやましいの。」
その言葉に、美都は泣きそうになった。
優しくなんか、ないのに。
病弱な体で、周りに何もできないと悲しむ沙希の方がよっぽどまっすぐだ。
あたしは、独りが怖いだけなのに。
偽善者なのに。
自分よりもずっと束縛されている姉。
彼女は、何を思って日々を生きているのだろう。