甘い蜜



ぐっと親父は押し黙った。


………俺の、勝ちだ。


「………では、また」


近い内に家に行きますから、と俺は社長室から出て行った。


何だか胸の中にあったつっかえが取れたような感じだ。


教師を辞める、のは少し心残りがあるが、親父にああ言ったんだ。諦めよう。
それに免許はあるんだ。
いつか、また出来る機会があるのかもしれないし。


「敬夜様!」

「?葛城?どうしたんだ?」


パタパタと駆け寄ってきた葛城に俺は首を傾けた。


「見送りです」

「そうか」


満面の笑みの葛城。普段は真面目な顔ばかりのこの男が笑みを浮かべているのは珍しい。



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