甘い蜜
「何で行きたくないんだ」
はぁ、と溜め息をつく。
「お金、払えないし」
「だから俺が出すって言ってるだろ」
「いや」
手の掛かる、強情な娘だ。
こうなったら最後の手段だ。
「………キスしてやらないからな」
「え……!?」
バッと麻理亜は俺を見上げた。
その目には不安が溢れている。
最近分かった。
麻理亜は構われないと弱くなる。
まぁそうなったのは俺のせいだが。
だからこの手の話になると何でも聞くのだ。
「……でも、行くなら沢山キスしてやるよ」