甘い蜜
その顔には、はっきりと物足りない、と書いてある。
それが分かっていても敢えて俺は分からない振りをする。
「どうした?」
ニヤリと笑いが止まらない。
「………分かってるでしょ」
「さぁ……言葉にしてくれないとな」
「意地悪……」
ぷうっと頬を膨らませながら麻理亜は俺を睨んでくる。
そんな顔をしても怖くなんかないし。むしろ襲いたくなるんだけど。
「どうした?遅刻するぞ」
でもこの悪戯を簡単に止めたくはないから続ける。
本気で時間もヤバいから準備しながらだが。
不意にスーツの裾が引っ張られた。