甘い蜜
思わず料理しているのを忘れ、玄関に走る。
「麻理亜、どうした!?………な、」
玄関には、立ち尽くしている麻理亜と……
「……真理子さん」
「………どういうことです?敬夜さん」
元、婚約者だった。
否、元なんかつかない。ただの相手先のご令嬢。
なんでここにいるのか、どうしてここを知っているのか。
聞きたいことは山ほどあったが、まず優先することがあった。
「………麻理亜、」
呼び掛けると、ピクッと麻理亜の肩が震えた。
ゆっくりと俺の方を見る。
そんな、悲しそうな顔をしないでくれ。今にも泣きそうな顔をしていた。