甘い蜜
「どこに行く?」
「どこって……荷物纏めるの」
「………は?」
「話って、出ていけって事でしょう」
言われなくてもでていくよ、と麻理亜は言う。
一瞬、冗談かと思ったが、今までありがとうございました、なんて冗談じゃない。
そこで気づく。
もしかしたら真理子さんの登場で固まっていたあの時、思考はストップしていたのだろう。
だから、俺達の会話を覚えていない。
なるほど……じゃない。
「……待て」
本当に荷造りを始めようとしていた麻理亜を引っ張って俺の腕の中に収める。
「離して」
「勘違いするな」
「勘違いなんてしていない」
私は出て行く……そうはさせない。