甘い蜜
ポロポロと泣きながらも大人しくなる。
黙っていたんだ、罵倒されるくらいなら耐えられる。それで、許してくれるなら。だが、俺の言葉までは、否定しないでくれ。
そこまで言って、漸く俺は溜め息をつく。
「………確かに真理子さんとは婚約していた」
ゆっくりと麻理亜から離れて、ベッドに座る。麻理亜は寝転がったままだ。
「…………やっぱり、」
「いいから聞け。でもそれは俺の意思ではない。親が勝手に決めたことだ。」
だから、婚約と言っても形だけ。口約束みたいなものだ。
親同士が交わしただけの。
「だから、お前は気にすることはない」
「でも、あの人は……」
「白紙に戻せと親父に言ったからな。親父があちら側に言ったんだろう」
しかし、なんて言ったのか。
納得しなかったから真理子さんは押し掛けてきたんだろう。