甘い蜜


ポロポロと泣きながらも大人しくなる。


黙っていたんだ、罵倒されるくらいなら耐えられる。それで、許してくれるなら。だが、俺の言葉までは、否定しないでくれ。


そこまで言って、漸く俺は溜め息をつく。


「………確かに真理子さんとは婚約していた」


ゆっくりと麻理亜から離れて、ベッドに座る。麻理亜は寝転がったままだ。


「…………やっぱり、」

「いいから聞け。でもそれは俺の意思ではない。親が勝手に決めたことだ。」


だから、婚約と言っても形だけ。口約束みたいなものだ。
親同士が交わしただけの。


「だから、お前は気にすることはない」

「でも、あの人は……」

「白紙に戻せと親父に言ったからな。親父があちら側に言ったんだろう」


しかし、なんて言ったのか。
納得しなかったから真理子さんは押し掛けてきたんだろう。



< 125 / 458 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop