甘い蜜
「………大切なんじゃなかったの」
「なにが」
「その………婚約…」
いつの間にかベッドの上で正座に代わっていた麻理亜は、膝の上で拳を握り締める。着ていたスカートに皺が入った。
「…………俺は、今年一杯で教師を辞める」
「……え?」
「教師辞めて、親父の後を継ぐ」
これが本当に麻理亜に話したかったことだった。余計な邪魔さえ入らなければ。
「先生を……辞める…?」
「あぁ」
「先生に成りたかったんじゃなかったの」
「まぁ確かになりたくなかったらならないな。教師なんて」
じゃあどうして、と言われても。