甘い蜜
「………私は、敬夜さんに会うまで愛なんて知らなかった」
父親に先立たれ、母親に捨てられ、絶望していた。
もし、あの雨の日、出会わなかったら一生孤独だったと思う。
「敬夜さんが愛してくれるなら………同じくらい、愛せるようになりたい」
「麻理亜………」
「ずっと、隣で………」
麻理亜も同じ気持ち。
それがこんなにもうれしいなんて。
「麻理亜、左手を貸せ」
「?」
麻理亜は、首を傾けながら左手を差し出す。それを取り、左手の薬指を優しく撫でた。