甘い蜜



「敬夜さん?」

「こんなとこであれだけど……」


ポケットから手を取り出す。
そのまま、手の中にあるものを麻理亜の左手の薬指に通した。


「………これ、」

「まだ、結婚は出来ないからな………予約だ」


手を離す。
麻理亜は目一杯目を見開きながらそれを凝視している。


一見シンプルに見えるそれだが、中心にはピンクダイアが埋め込まれている。指輪の裏には、今は見えないが文字も彫らせてある。


「………夢、みたい…」


指輪を見つめていた麻理亜がポツリと呟く。
そして、涙を浮かべる。


< 197 / 458 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop