甘い蜜
「敬夜さん?」
「こんなとこであれだけど……」
ポケットから手を取り出す。
そのまま、手の中にあるものを麻理亜の左手の薬指に通した。
「………これ、」
「まだ、結婚は出来ないからな………予約だ」
手を離す。
麻理亜は目一杯目を見開きながらそれを凝視している。
一見シンプルに見えるそれだが、中心にはピンクダイアが埋め込まれている。指輪の裏には、今は見えないが文字も彫らせてある。
「………夢、みたい…」
指輪を見つめていた麻理亜がポツリと呟く。
そして、涙を浮かべる。