甘い蜜
「夢なんかじゃない」
「本当に……」
「現実だ」
ポロッと流れた涙を俺は、手を伸ばして親指の腹で拭ってやる。
「泣くのは早いぞ?」
クスクスと笑う。
あくまでも仮、いわば婚約指輪だのにこんなに泣かれては本番はどうなるやら。
「仕方ないもん……嬉しいから……」
泣きながら頬を膨らます麻理亜に笑みが深まる。
「でも、これで俺達は離れられないからな」
二人を繋ぐもの。
俺は、もう一度ポケットに手をいれ、小さな箱を取り出す。