甘い蜜
今日、正式に麻理亜は、俺のものになる。
もの、というのは言葉があれだが、他に言葉が見つからない。
伴侶になる、で、いいのだろうか。
お互いに死ぬまで一緒にいると誓う相手。
「麻理亜ちゃんの所には行ったのか?」
親父の質問に否、と答える。
どうしてか、と聞かれ、本番まで取っとくためと椅子から立ち上がりながら答えた。
白いタキシードは慣れないものだ。
「そろそろ、だな」
親父が時計を見ながら答えた。
「あぁ……親父はこんなとこにまだいていいのかよ?」
「ん?もう行くさ」
親父には麻理亜と一緒にバージンロードを歩いてもらうことになっている。
結局、この四年、麻理亜は実の母親に会うことはしなかった。
父親には挨拶のため墓参りに行ったが、母親には挨拶すらしにいかなかった。
きっともう私なんかあの人の中から消えてるよ……と悲しそうな顔で言ったのを覚えている。