甘い蜜
「敬夜さん……」
照れたように顔を薄く赤める。
「二人とも、幸せにな」
そう言って役目を終えた親父は離れていった。
「………麻理亜」
そっと手を差し出すと、おずおずと手を重ねた。
音楽が鳴り止む。
隣に並んだ俺達は、真っ直ぐ前を向いた。
俺達の前には優しげな容貌の神父が立っていた。神父は俺達を交互に見ると、一つ頷く。
ここからが、本当の俺達の始まりだと思う。
出会いは雨の日だった。
ずぶ濡れの麻理亜を拾ったのが始まり。