甘い蜜
最近ようやく表情を見せてくれるようになった麻理亜。
ここにきて、また色んな顔を見られたと思う。
それにきっと麻理亜は生き物が好きなんだと思う。
信号が赤になったので、俺は一時停止した。信号を気にしながら助手席の様子を窺うと、すやすやとイルカの大きなぬいぐるみを抱えたまま眠る麻理亜。
イルカのぬいぐるみは、帰りに偶々麻理亜が見つけじっとそれを見つめていたので買ってやった。
欲しいなら欲しいっていえばいいのにな。
「もう少し………甘えろよ…」
ポツリとつぶやいた言葉は寝ている麻理亜には勿論聞こえない。
手を伸ばして麻理亜の頬を撫でると、んぅ……、と身じろぎをした。