甘い蜜
「礼はいい………その代わり、あの男はこっちで好きにさせてもらう」
「ああ………地獄を見せてやってくれ」
「地獄がましだと思えるくらいにな」
薄く笑う龍に頷いて俺は学に礼を言う。
「本当に助かった」
「敬夜に礼なんか言われると照れる………早く帰って休ませてやれ」
「あぁ」
俺は頷いてから、腕の中にいる麻理亜を見下ろす。
泣きはらして疲れたように眠る麻理亜。頬には涙の痕がついている。
そっと頬に手をおいて。
直に感じる麻理亜の体温に、ホッと息を吐いた。