甘い蜜
「……何を言われた?」
「………」
「麻理亜」
首を振るだけの麻理亜。
しかし、俺が低い声を出すと、ポツリと話し始めた。
「………あの人が、死んだって…」
あの人、とは麻理亜の母親の事。麻理亜は母親の事をお母さんとは呼ばなかった。
母親、死んだのか。
麻理亜を脅かす存在が消えたことに俺は安堵する。
「あの人が、死んだのは、私のせい………」
「………」
「お前が勝手に逃げたから、死んだって言われた……」
ポツリポツリと今まで俺に言わなかったことを語っていく。
俺と会うまではあの家族の中で働いていたのは自分だったこと。
学校に行かなかったのは、バイトしていたからだという。
そして、自分が逃げたせいで金が入らなくなって、借金をし始めたこと。