甘い蜜



思わずピタリと足を止める。


周りを見渡せば、一つの教室に明かりがついていた。


「………数学準備室……?」


普段は授業前に先生達が道具を取りに来るためだけに使われている教室。
こんな遅くになんでついてるんだろう。


気になって近づいてみると、ドアが少しだけあいていた。中を見るには十分な隙間だ。


そろっと中を覗き込む。
中にいる人物を見た途端、バッとドアから離れた。


な、なんで………


ドクドクと心臓が脈打つ音が耳に届く。ゴクリと生唾を飲んで、もう一度中を覗いた。


「………敬夜さん、どうして怒ってる?」

「……どうして?分からないか」


私の目先には、香山先生と山内さんの二人が映っていた。


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