甘い蜜
「嘘じゃないよ」
「お前、鈍すぎだろ・・・」
何だか、さっきまで苛ついていた俺が馬鹿みたいじゃないか、と呟く先生に、山内さんは薄く笑った。
あ、笑ってるの初めて見た。
「だって、ただ付き合ってだよ?気持ち言われてないから」
今までいろんな人に呼び出しされたけど皆ただ付き合って、て言うだけ。そんな人をまともに相手なんかしない。
「私に好き、とか愛してる、って言ってくれたのはお父さんと敬夜さんだけだよ」
「麻理亜………」
嬉しそうに笑う山内さんに先生も笑う。
二人は、名前で呼び合っている、つまり、そういう関係ということ。
………二人は、やっぱり付き合ってるんだ……
二人の会話で私は確信した。