甘い蜜

唖然としている教師をほったらかして、俺は自分の席に戻る。
そして、座る前にもう一度、山内さんの席をチラッと見た。


そういえば、最近の彼女は、前の彼女と少し違うような気がする。


俺によって恥をかかされた数学教師は、苛立ちを隠さないまま勝手に授業を終わらせて出て行った。周りの連中に凄いなどと誉められながら、しかし俺は別のことを考えていた。


すると、ガラッと突然後ろのドアが開き、山内さんが入ってくる。
クラスは一気に静かになって、山内さんに集中した。


相変わらず綺麗だな……と見惚れてしまう。山内さんは俺達の視線なんか気にしないで自分の席に座る。それからいつものように窓の外を眺め始めた。


そうやって彼女はいつも一人だった。誰とも関わろうとぜず、自分の周りには壁を作っている。


一人は寂しくないんだろうか。


何度も思って俺は話しかけようとしたけど、緊張して実行に移せていないのが現状。