甘い蜜
山内は、パチパチと何度も瞬きをしながら首を傾けた。
「先生こんなとこで何してるの」
「あぁ……って違うだろ!傘もささずに何をしてるんだ!?」
「別に……濡れたかったから…」
「風邪引くだろ!」
俺は、山内を傘の中に入れる。
山内は俺のクラスの生徒だ。あまり学校には来ず、来てもぼんやりしている不思議な生徒だった。俺が知ってる中で山内が笑っているところは一度も見たことがない。
「たく……こんなずぶ濡れに…」
溜め息混じりに山内を見下ろすと、濡れて制服はその役目を果たしていなかった。