甘い蜜
「ありがとうございました。」
「はい。また次の診察でね」
「はい」
軽く頭を下げてから俺と麻理亜は診察室から出た。母さんは、医者とつもるはなしもあるから先に帰って良いと言われた。
車に戻るまでの道をゆっくり歩く。
「なんか、不思議だね」
ここに、赤ちゃんいるって
ふわっと微笑む麻理亜は既に母親の表情だ。
「やっと念願叶ったな?」
「クスクス、そうだね」
「驚いたよ」
「私も」
でも嬉しいね、と麻理亜は言う。
ああ、本当に嬉しい。
俺達の子供が、いる。
「麻理亜」
「なに?」
「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
そして、まだ見ぬ俺の子供に、ありがとう
―END―