甘い蜜
やっと授かった宝。
「………ん」
カクン、と少し勢いよく頭が下がり、麻理亜が目を覚ます。
「お早う、麻理亜」
「………あれ?」
パチパチと目を瞬かせる。
俺は、フッと笑みを浮かべる。
「何時帰ってきたの?」
「今さっきだ」
チラッと時計を見て、あ、と麻理亜は声を上げる。
「何時の間にこんな時間……」
「今日は良い天気だったからな」
そういって、我が子を見るとまだ気持ち良さそうに夢のなかだ。
一体どんな夢を見ているのだろうか。
「壱斗も気持ち良さそう………」
優しく眠る壱斗の頭を撫でる麻理亜はいつの間にか母親の顔をしていた。
慈愛に満ちた顔でまるで聖母のようだ。
「本当にな」
俺も壱斗の頭を撫でた。