甘い蜜
「夢?」
「………うん、寝たらもしかしたら今日のは夢だったんじゃないかって……怖い」
怖いと麻理亜はいう。
俺は、麻理亜の隣に腰を下ろして胡座をかく。
麻理亜の横顔を見ると、昼までの年相応の表情が一変して、あの日のような無表情だった。
「……麻理亜」
「私ね、こんなに幸せだった日、今までなかった」
ポツリポツリと麻理亜は言葉を零す。俺は黙ってそれを聞いた。
「きっと夢なんだよね……醒めてほしくないな……」
ずっとこの幸せに浸っていたい、と言う麻理亜を、俺は自分の方に抱き込んだ。
「―――夢じゃない」