甘い蜜



誰かを、しかも女を自分の家の、テリトリー内に入れるなんて初めてだった。
いくらずぶ濡れで風邪を引くかもしれない、といった状況でも、いつもの俺なら家に送り届けるはずなのに。


「………すまない、珈琲しかなかった」

「ありがうございます」


湯気の立ち込めるマグカップを渡すと、山内は礼を言って受け取る。
その隣に座って、俺は持ってきたミルクと砂糖を前のテーブルに置く。


「ミルクと砂糖は自分の好みで使ってくれ」

「……私、ブラックしか飲めない」

「珍しいな」


普通はブラックは苦くて飲めない、てのが多いんだが。



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