甘い蜜
確かに、あの人とは、必要最低限の会話しかしたことがなかった。
抱き締めてもらったことなんかなかった。
あの日程、なんで死んだのがこの女じゃなかったのか、て思った。
お父さんは私を可愛がってくれた。愛してくれていた。でも母親は私なんか愛していなかった。
再婚して、あの人は私に衣食住だけを与えて義父にべったり。
居心地が悪かった。
夜になると女の快楽に溺れる声。
私は眠れなくなった。
会話なんて勿論ない。
「そんな人に愛されたくなんてないっ………!!」
お父さんがいてくれたらって何度も思った。
いつからか、そう思うのも止めてしまった。現実を見ていたから。