甘い蜜
誰一人として。
人は誰かに愛されるために産まれてくるのだ。
「俺が、愛してやる」
「?!」
「ずっとずっと、お前がもういいって思うくらいに」
母親に愛されなかった分だけ俺が。
ぎゅっと麻理亜を強く抱きしめる。
離れていかないように、離さないように。
「………ほんと、に?」
「本当だ」
「私を?」
「愛してやる。その代わり、麻理亜も目一杯俺を愛してくれよ?」
自分でもはずかしい言葉だと思う。でも、恥ずかしさはない。
額に、瞼に、鼻頭に、頬に、キスを落としていく。
そして、少し距離を置いて、麻理亜を見つめて。見つめ返してくる麻理亜の両頬を親指の腹で涙を拭ってやりながら、俺は唇にもキスを落とした。