チャリパイ13~ジョン・レノンの幻の楽譜~



「♪大阪くわえたノラネコ~追~っかけ~て~♪セリフを~忘れた~♪ゆかい~なサザ~エさん~♪」


「やっぱり歌詞が変ね…」


「セリフじゃなくてサイフだよ♪お母さん♪」


「そうそう~サイフだったわ♪…って、いけない!私、買い物寄って行こうと思ってたのに財布忘れてきちゃったわ!」


「ゆかい~なお母さん♪」


娘を保育園に迎えに行った後に、そのままその足でスーパーに寄り買い物を済ませようと考えていた朧だったが、肝心の財布を忘れて来た事に今、気が付いた。


「え~と…娘を家に送って、財布を持って出掛け…でも娘一人家に置いていけないし…どうしようかしら……」


朧は、女手ひとつで娘を育てている。


誰も居ない家に、大切な娘一人を残して、もし何かの事故が起きたらと思うと、とてもそんな気になれない。かといって、まだ幼い娘にあまり長い道のりを歩かせるのも可哀想である。



困り果てた朧の目に、ふと、にこやかな顔でずっとこちらを見ている子豚達の姿が映った。


「あそこの人達、少しの間娘を預かってくれないかしら…」


そんな朧と、子豚達の目が合った。


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