チキン彼氏を救出せよ!!
「ちょっとおぉぉぉぉお!!
おばさん、チケット盗んじゃ駄目でしょーがぁあ!!」
あたしは約3メートルまでおばさんに近付くと大声で叫んだ。
おばさんはクルッと振り向いてあたしのほうを見た。
「あぁ。ライオン女やん。」
おばさんは何事もないかのように平然といった。
ら…
ライオン女ぁ!?
「あんたねぇ、ウチの彼氏のチケット盗むなんて最低や!!
さっさと返してくれん!?」
あたしは怒りのあまり関西弁になって怒鳴る。
一方おばさんはひょうひょうとして、
なんのことですか?
みたいな顔をしていやがる。
「あのぅ…。」
はらはらとあたし達を見ていた案内人の人がおずおずと話しかけてきた。
「なんスかぁ!?」
あたしはチンピラみたいな顔して聞く。
「…あ、あの、この方の持っているチケットは、カップル割なんで…。
貴方の彼氏さんので間違いないと…思います。」
そう言ってチラッとおばさんのチケットを確認する案内人。
「ほぉーら!!
早く返しなさいよ!!」
あたしは得意げにおばさんに言ってやった。
ふふん、これでこのチキンばばぁもぐうの音も出まい!!
勝ち誇ったように笑うあたし。
しかし、あたしはおばさんをなめていた…。
「あっ!
ちょ、ちょっと!!」
案内人の焦った声を聞いてその方角を向くと、
なんと強行突破して園内に入るおばさんの後ろ姿が見えた。
…………なんか、
完敗っていうか、
そもそも勝てる相手じゃなかったみたいな。
そこまでして動物園に入りたいのか、みたいな。
そんでもって、呆れて言葉も出ない、みたいな。