コスモスの記憶
序章
「お前も行ってしまうのか?」
どんよりと曇った空の下、一人の女は言った。
「はい。それが私の役目であり、使命でもあります。」
女の問いに答える様に、一人の男がまた答えた。
向かい合う2人の会話を聞いているものなど周りにいない。
周りにいるのは、怪我に呻く人にその介抱をする人。そして、旅立ちの準備をするものだけ。
そんな人たちに、この2人の声は届いていない。
「なぜ…。なぜこんなことになる?
私はこんなこと望んでなどいなかった。
ただ、笑い合えればそれでよかった。
なのに、どうしてこんなことに………。」
何か後悔をしたような色を顔に浮かべ、女は涙ぐみながらも男に言う。
その声はか細く、弱弱しいものだ。
「そんなことをおっしゃらないでください。
いつか来るはずだった事。
それが今この時に来てしまっただけのことです。」
そう言って男は女とは逆の方を向いた。